「私が開発するお化粧品ができることはたった1つメイクのダメージをケアするに尽きると思います」(茂田)
茂田氏

MANAMI)使う側である私が最近思うようになったのは、いままで化粧品を使って何か違和感や刺激があると、一方的に「あ、これは合わない。何か合わないものが入っている。もう二度と使わない」って判断していたんですね。一般の消費者の方もだいたいそうだと思いますが。でも実は、その刺激の理由は“商品の使い方”にあるということも大いにあって。コットンにちょこっとクレンジング剤をとって目もとをゴシゴシふき取る。それだけ刺激を与えておいて、その後に洗顔して直後に化粧水をつけたら普段しみないものでもしみる可能性は高まりますよね。自分が適正なチカラ加減で顔を洗っているかとか、そういうところには焦点が合っていないケースって、すごく多いです。メイクのチカラ加減にしても、トイレのパウダールームとかで見ているとアイシャドウをまぶたが引っ張られるほどゴシゴシ擦ってつけている方とか、心配になっちゃいます。それで、化粧水が目もとにしみちゃったとか、まぶたがハレて、というのは当然のなりゆきですよね。

茂田)なのに、化粧品に入っている成分のせいにしてしまう人はかなり多いと。

MANAMI)そうです、そうです。「ニキビが止まらない、化粧品が合っていないのでしょうか」と言っていたけど、実は枕カバーをきちんと替えて清潔を心がけたら良くなったり。汚れて黒ずんだスポンジでファンデーションを塗っていた子に、100円ショップの使い捨てのもので良いから毎日キレイなスポンジで塗って、とアドバイスしたら「恥ずかしながら、吹き出物が全部消えました」という報告をもらったり(笑)。化粧品を提供する側にも、使う側にも、どちらにもミッションはあると思います。

茂田)確かに。いずれにしても、正しい情報が伝わって欲しいと思っています。というのもこれから先、環境問題の深刻さとともにますます肌トラブルって増えていくと思うので。紫外線量が昔と比べて18%近く増え、その一方で湿度の平均はどんどん下がっていて。紫外線はシミ・そばかすの問題だけでなく肌自体の機能低下につながりますから。東北大学の名誉教授で、皮膚科の権威といわれる田上先生という方がいるのですが、もう80代の田上先生が皮膚科医になられた時は「乾燥肌」はまだ病名として認定されていなかったそうなんです。当時の日本で、例えば冬に暖をとるのが囲炉裏やストーブだった頃は、乾燥肌という言葉がなかった。それが日本でもセントラルヒーティング、空調システムが当たり前になってきたあたりから「乾燥肌」「乾皮症」という言葉が皮膚科で使われるようになったと。「敏感肌」は世間では一般的になっていますが、実は医学的にはまだ認められていない名称です。ただ、あまりの敏感症状の事例の多さに、最近はクリニックでの診断でも「あなたは敏感肌ですね」という言われ方がされるようになってきたそうです。

MANAMI)私たちが子供の頃はそんなに多くなかった、アトピーに悩む人も、本当に増えましたよね。

茂田)子供の幼稚園の催し物などに行くと、アトピーやアトピー予備軍、何がしか肌にトラブルを抱えていそうなお子さんは4〜5人に1人、くらいの割合でいますね。

MANAMI)芸能関係でメイクのお仕事をしていても、もう普通に「アトピーが首もとに出ているので、上手くカバーしてください」というリクエストがあります。

茂田)皮膚科学の常識が変わってきたのと同じように、コンプレックスの定義というものも、少しずつ変わってきているのでしょうか。ナチュラルメイクの定義にしてもそうですが…。

MANAMI)男性が「メイクが薄くて、ナチュラルでいいじゃない」と思っているメイクって、女性からすると1時間くらいかけて仕上げているメイクだったりはします(笑)。最初の話に戻りますが、台湾で私が活動していた時に好まれたのは、まさにこういうメイクです。「もともとの顔がこうなのよね」と思われる、でも本当は隠しでアイラインを入れていたり、メイクするところはしっかりしているメイク。

茂田)化粧品開発って、コンプレックスとどう向き合うかっていう仕事だとずっと思っています。「キレイな人ってコンプレックスがないんでしょ」っていう声もある一方で、実際にはそんなことないことのほうが多くて。実は、コンプレックスにたいしてコンプレックスと思っていないような人がキレイに見えてしまう、というような実情ってあると思うんです。ここがイヤだ、と思い詰めてそれを隠そうとすればするほど、その部分が悪目立ちしてしまうとか。

MANAMI)それはすごくある。写真とかではそれがより顕著にわかってしまう時代でもありますね。頬に手を添えていつも自撮りしている人は「あ、顔の大きさを気になるのかな」と受け取られたり。いまはアプリなどで写真の加工ができてしまうので、写真と実物のギャップを埋めたいという気持ちから、メイクや、なにかモノに頼り足りという傾向もあると思います。ただ、パーツの形、ほくろなどにしても、本人がイヤだと思っているそのことが、周りから見るとその人らしさだったり、かわいいじゃない、という評価だったりして。私はそういう部分をポジティブに捉えられるような“個性を伸ばすナチュラルメイク”を提案していきたいと思っています。ひと昔前には多かったのですが、正しいとされる黄金比に近づけるメイクっていまはちょっと違うかな、と思います。修正メイクとか、しっかりカバーでキレイに整える、というのも過去には手がけましたが、いまはそうじゃなくて良い気がするんです。

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