「ハーブ=ゆとりのある人が楽しむものという印象を持ち続けているのはソンですよね」(茂田)

茂田)例えば、いま本を作っていた忙しい時代に戻ったとして。「今日のランチはどうしよう、お夕飯を作る時間はとてもなさそう…。じゃあ食べにいく? 何か買って帰る?」となりますよね。実際そういう方ってたくさんいると思うのですが、鳥海さんからアドバイスするとしたらどんなことに気をつけたら良いでしょうか。

鳥海)私が最近特に大事だなあ、と思っていることはやっぱり"出汁"なんですよね。極端なはなし、出汁があって、お米が炊ければなんとかなると思っているんです。漢方相談薬局で働いていた頃によく思っていたことがあって。病院と違って、漢方相談薬局では保険はきかないので月に二万円近くする高い漢方薬を若いかたでも買っていかれるんですが、「お米は食べてますか?」って聞くと「家に炊飯器がないんです」とか「家に帰った時はもう空腹がピークなのですぐに茹でられるパスタです」という人が実に多かったんですね。汁物なし、という人も多いですね。代わりにジュースとか飲んじゃうのかな?来店されるお客様のトラブルとしては、冷え症や生理痛、貧血などがとても多いのに、あたたかい飲み物を飲んでいない人の多いこと。お米を食べて、お味噌汁に旬の野菜をちょっと多めに入れて、たとえば豚肉が少し残っていたら豚汁のようにしたっていいと思うんです。そうやって、具沢山のみそ汁やあたたかいスープと、ご飯があれば基本は押さえられるので、私は最低限この2つをおすすめしたいです。

茂田)なるほど、それってひと手間のかけ方の方向性の問題ともいえますね。

鳥海)「ふだんの料理」は、そんなにごちそうを食べる必要はないんです。

茂田)でもそうやってパスタで簡単に済ませつつも、自分の体のことは気になるから漢方を買いにくるわけだから。どこかにひと手間かけなきゃという意識は働いているんですよね。ただそのひと手間かけるところが、ご飯はおろそかで、漢方を買って飲む、っていうそちらの方向性で良いのかどうなのか。

鳥海)そうなんです。出汁っていうとちょっと面倒くさいように感じる方もいるかもしれませんが、日本の出汁は西洋の出汁と違って時間がかかりませんよね。前日に昆布を入れておいて、かつおぶしをぱっと入れて5分も煮れば十分。それを、その都度作ろうと思うと大変なので週末にまとめて取っておくとか。そこだけはちょっと頑張ってほしいんです。そこまでやっておけば、あとは有りものの旬の野菜を入れるだけでできちゃうわけですから。

茂田)外でのランチを選ぶ時とかに「こういうお店良いなあ」とか、逆に「こういうお店はちょっとイヤだなあ」といった、選択の基準ってあるんでしょうか?

鳥海)女の人がよく陥りがちなのは健康のためにはとにかく野菜を食べなきゃと思って、冷え症の場合でも体を冷やす生野菜サラダが充実した店を一年中選ぶという傾向ですね。これは今でも根強いなあと感じています。デパ地下のデリなんかを見ていてもそうですし。蒸し野菜のような加熱したホットサラダ的なものがメニューにあるお店って、意外に少ないんですよね。蒸して軽く塩をふって出してくれるだけで良いのにって思っちゃいます。さっきの足し算よりも引き算の話と一緒で、私自身は手を加えてこねくりまわしたものよりも、シンプルに体にやさしいものが食べたいし、そういうメニューがあるところを選んで行くようにしてますね。

茂田)確かに外食をすると冷たいものの割合って多いんですよね。もちろんパスタにしても何にしても、メイン料理は基本的にあたたかい状態で出てくるけれど、体があたたまるか、っていうと違いますよね。

鳥海)なかなか体の芯まで熱が入ってこないんですよね。なおかつ、食べる直前に氷が入ったお水が出てくる。中国の人から見ると、あれは「ありえない」そうです(笑)「なぜ、食べる前に消化を悪くするようなものをあえて飲ませるんだ」と。言われてみればそうだなと思って。

茂田)食前酒の考え方とかって、中国とかでどうなんでしょうか?

鳥海)お肉をいっぱい食べる時は、消化を助けるサンザシのお酒やお茶を飲むといったことはありますかね。ちなみに私は食中酒推進派でして、おいしい料理と一緒に日本酒のお燗を飲むっていうのがすごく好きですが(笑)

茂田)私も飲むのは好きなので、料理とお酒というのは大事な関係な気がするんです。翌日二日酔いでどうにもならないのは困りますが、適量であれば。

対談風景 鳥海)そうですね、適度なお酒は食べる楽しみを倍増してくれますし、それこそ血行を良くしてくれます。あ、でも「私は冷え症で」っていう人に限ってなぜかビールを飲んでいたりしますよね(笑)そういったレベルの話でいったら、冷えやすい人はせめて食前に出される氷入りのお水だけでもパスすることをおすすめしたいです。健康になるために何かやることを増やすとなると、どんどんストレスが溜まっていくような悪循環に陥りがちなので、これまでの習慣をちょっと見直す、というだけでもだいぶ違ってくると思います。

nesno商品一覧