「大切な人達と食卓を囲みながら美味しいって思ったり、それに勝る幸せってあんまりないなと思って」(鳥海さん)

茂田)ちょうど鳥海さんとお会いする少し前から、化粧品でアンチエイジングを追うっていうことに対して、すごく自分の中で自然の摂理に反しているんじゃないか、と思っていました。化粧品開発者でありながら、アンチエイジングのスキンケアって正しいかたちじゃないんじゃないか?と感じていたというか。むしろアンチエイジングって、食べ物、食事からのアプローチのほうが有効なんじゃないかと思い始めていたタイミングでご縁があって。その前から、ビタミンが、ミネラルがといった栄養学的な知識は自分でも勉強したことがあったのですが、薬膳という視点からは勉強したことがなかったんです。それが、鳥海さんとお話していたら薬膳って、季節を楽しむとかそういうことも含まれていて、そこまで難しく考えなくてもよいことがわかって面白い!と思いまして。

鳥海)そうだったんですね。そう、薬膳は知ってみると意外と特別なことではないんですよね。

茂田)食べ物の肌への影響といっても、今日明日に変わるということじゃなく、やっぱり日々の積み重ねが大切ですよね。とはいえ忙しく働いている方に、「毎日ちゃんと作りましょうね」というのもナンセンスだし理想論だけで終わってしまう気がするんです。例えばお弁当買う時にどんな食材を使っているものを選ぶと良いのかなど、そういったコツも教えて頂きたくて今年はネスノのサイト内の『キレイのいろは』で鳥海さんに連載をお願いすることになりました。まずは、鳥海さんが薬膳をはじめたきっかけはどんなことだったんでしょうか?

茂田氏 鳥海)私が食の仕事をはじめたのは、30代に入って結婚をしてからなんです。それまでは実家が本屋をやっていることもあって、本の編集と販売の仕事をしていました。仕事自体はキライではなかったんですけど、やっぱり仕事で本を作り始めると、結構そこにはまってしまって、同時に自分のためにちゃんとした食事も作っていくっていうのは、私にはちょっと無理でした。ついつい食事は二の次、三の次になってしまって。それで、29歳くらいの時に一度がたっと体調を崩して、その時に「ん、このままじゃまずいのかも?」と感じたんです。入院すると、普段の生活から切り離されますよね。家で休んでいるくらいだと、結局は仕事を引っぱり出してきちゃったりしますけど。入院生活で少しゆっくり考える時間を持ってみたら、「自分にとって、すごく好きな人や大切に思っている人達とひとつの食卓を囲みながら美味しいって思ったり。そういうことに勝る幸せって、本当はあまりないのかもな」って気づいたんです。それで、仕事ももちろん楽しいけれど、自分のベースは食にあると思えたのがひとつですね。

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